ごあいさつ

理事長 今井 奬

2011年3月の東日本大震災により被災された方々に心からお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興を祈念しております。

さて、以下の背景によりまして世話人有志は口腔疾患予防のための口腔保健用機能性食品について広く学術的立場から考える機会を作りたいと数年前から討議を重ねて参りました。そして平成23年8月21日に94名のご参加を賜り口腔保健用機能性食品研究会(仮称)設立総会を開催し、正式に「口腔保健用機能性食品研究会」を設立することができました。ここにご協力を賜りましたすべての方々に厚く御礼申し上げます。これから「口腔保健用機能性食品研究会」の発展のために努力していく所存でございます。何卒ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

1.背景

1991年に特定保健用食品(トクホ)の制度がスタートして20年が過ぎました。口腔領域においても、当初はむし歯にならない、あるいはなりにくい食品が申請・許可されてきました。口腔領域における特定保健用食品の承認の判定については、平成10年4月に厚生省(当時)から通知された『代替甘味料を関与する成分とし、「むし歯にならない」等の旨を表示する特定保健用食品の申請・評価に関する指針 -ガム,キャンデーの場合- 』があるのみです。これも時間の流れとともに改良を加えていく必要が出てきています。う蝕予防のためには、1日3回の食事時間に摂取する食品ではなく間食品を対象とすることが妥当であり、その摂取時期や方法が重要となります。また、う蝕予防の基本として、間食品が積極的にう蝕を予防する「機能的成分」を含むこと以前に、酸の原料となる成分が含まれていないこと、が重要です。

その後、エナメル質再石灰化促進物質を含む新しい機能性食品がトクホとして許可され、現在では歯科トクホの主流になりつつあります。しかし、再石灰化評価のための公定法が存在しないため混乱を招いているのも事実です。加えて、キャンディー・ガム以外の菓子類については評価の基準があいまいで、マニュアル化された方法がありません。

さらに近年に至り、複雑な口腔細菌叢の動きを正確に捉えることが要求される細菌のバイオフィルム形成阻害剤や増殖阻害剤の有効性の評価、酸蝕症などに関わるエナメル質脱灰性の評価、歯周病などの口腔疾患を予防する機能性食品の判定等々、科学的に妥当で公平な評価方法を確立する必要性が強く望まれています。

2. 口腔保健用機能性食品研究会の役割

上記の背景に基づいて問題点を将来的に解決するために、(1)口腔領域における機能性食品に関する情報交換と、(2)口腔疾患の特殊性を考慮した口腔疾患予防のための機能性食品の評価方法の提言、を目的とした口腔保健用機能性食品研究会の果たす役割は大きいと考えます。

折しも2011年8月10日には「歯科口腔保健の推進に関する法律」が施行されたばかりです。この法律は、国民が健康で質の高い生活を営む上で、口腔の健康が基礎的かつ重要な役割を果たしているという認識に立脚しています。口腔の健康の維持のために食品の果たす役割が大きいことを物語っています。このことから考えましても「口腔保健用機能性食品研究会」の果たすべき役割も大きいと考えています。

つきましては、上記趣旨にご賛同いただきまして本研究会にご参加賜ることができましたら幸いでございます。何卒よろしくお願い申し上げます。

平成23年8月21日